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「みんなの夢AWARD16」で「深層元肥イノベーション」がグランプリに

2026.03.16  コラム

公益財団法人みんなの夢をかなえる会(東京・大田)は3月12日に「みんなの夢AWARD16」を渋谷公会堂で開催した。2回の選考を経て、当日は8人のファイナリストが登壇し、審査委員や聴衆にプレゼンを行った。審査の結果、グランプリには新しい稲作技術の「深層元肥イノベーション」が選ばれた。

「みんなの夢AWARD」は2010年に初めて開催し、今回で16回目。「共感性・社会性」「事業性」「プレゼンパフォーマンス」の3つの観点から評価する国内最大級のソーシャルビジネスコンテストとなっている。過去のファイナリストには分身ロボット「Orihime」を開発するオリィ研究所(東京・中央)の吉藤オリィ氏や、KURABITO STAY(長野県佐久市)の田澤麻里香氏などがいる。

「みんなの夢AWARD16」では全国から710のエントリーがあり、8人のファイナリストが選出。審査委員長の渡邉美樹代表理事、審査委員はアチーブメント株式会社(東京・江東)の青木仁志代表取締役会長兼社長、さわかみ投信(東京・千代田)創業者の澤上篤人氏、レオス・キャピタルワークス(東京・千代田)の藤野英人社長が務めた。

■環境も収益も伸ばす稲作実現へ

8人のファイナリストからグランプリに輝いたのは、山根正博さんが発表した「深層元肥イノベーション-肥料3分の1で育つ次世代稲作システム」。

このアイデアは偶然から生まれたものだった。農業高校の教師である山根さんの授業で、生徒が肥料を入れ忘れた田んぼがあった。すぐに肥料をいれた上で成育を見守って収穫したところ、収穫量は変わらず、かつ根は肥料を入れ忘れたほうが伸びていた。

「肥料がなければ、栄養をとろうとより深く根を伸ばす。それならば、より肥料を深く入れれば、より育つのではないか」。こう仮説を立てて実践。実際に正しかった。肥料を深く植えるための田植え機も自作し、これに興味を持ったヤンマーとの共同開発も決まったという。

肥料も5年かけてプラスチックゼロのものを開発。肥料の量も従来より減らしたが収穫量は15%以上増えたという。水質やGHG排出量の改善にもつながる。加えて、山根氏は「肥料費・労務費のコストを抑えることができる。農業法人であれば、年間300万円以上のコスト削減が可能だ」と強調した。

■廃棄パンをミソにして、発酵文化再生を

準グランプリには「パンミソキット」をプレゼンした広瀬絵里加さんが選ばれた。廃棄パンにパンミソキットを使うことで約3週間でパンミソが完成するもの。日本では帝国ホテルなどが採用し、すでに800㎏の廃棄されるはずだったパンがパンミソになった。

原料は廃棄されるパンで、新しい設備投資などは不要。どのような厨房でも実践することは可能だ。広瀬さんはこのパンミソキットを通じて「単なる食品ロスの取り組みにとどまらず、発酵文化の再生にもつなげていきたい」と強調した。

 

■髪を乾かす時間も環境負荷も低減

橋本侑奈さんは15秒で髪を乾かすことのできる「Dry Fun」をプレゼン。日本人女性は髪を乾かすのに平均8分、1週間で約1時間を使っていて、年間の消費電力量は約34億キロワット、CO2排出量は150万トンに上る。

ヒントとなったのはタオルだ。橋本さんは「机の上に水がこぼれたとき、タオルとドライヤー、どちらを使いますか」と問いかける。当然、タオルだ。そのうえで「水を取り除くのには吸水することが重要だ」と強調。吸水材を工夫して装置を開発し、ドライヤーの時間を87%削減することに成功した。

現在は髪の毛全体を乾かす「Dry Fun」のプロトタイプを開発中だという。時間効率だけでなく、非電力・無熱・無風。橋本さんは「女性の可処分所得時間を増やすとともに、誰でも使えて、環境負荷も低減するものだ」と強調した。

■「夕張メロンサーモン」で漁業も地域も活性化

「将来の夢は漁師」と話す八方宏斗さん。しかし、漁業者の数は年々減少傾向にある。彼が発表したのは、漁業の六次産業化に向けて、財政破綻を経験した夕張市の地域活性化を掛け合わせる「夕張メロンサーモン」をプレゼンした。

「フルーツ魚」といわれるものがある。出荷の2~4週間前から餌にフルーツの果皮を混ぜて魚の鮮度が向上するとともに、食べる時にはフルーツの香りがする。鮮度の向上にはβカロテンがかかわり、このなかに含まれるビタミンAが鮮度を長く保つ効果がある。夕張メロンは他の果物に比べて、このβカロテンが多い。エサとして使用する部分は本来廃棄する果皮なので、エサ代も15%ほど削減できる可能性がある。

 

■ダンゴムシが肥料や医療品をつくる

「テラリウムにダンゴムシをいれたら、ビンは汚れずにきれいなままだった。ダンゴムシに自浄作用があるのではないか」。こんな発見から、ダンゴムシによる循環型社会について夢を語ったのは眞杉雛多さんだ。

たとえば肥料。茶かすをダンゴムシに与えると、ダンゴムシや微生物が肥料をつくる。肥料ランクは立命館大学の検査で特Aランクで、高い評価を得た。眞杉さんによると茶かすだけでなく「食品廃棄物や家畜廃棄物、農業廃棄物など様々なものを原料にできる」という。

世界的にはこうした昆虫ベンチャーは多く立ち上がっている。それらの企業で扱うのは、ハエの幼虫やミルワームだ。眞杉さんは「ハエの幼虫やミルワームは木質系の廃棄物や植物残渣の肥料化は難しい。これが当社の優位性だ」と話す。将来的には肥料だけでなく、医療品や代替魚粉などへの活用も目指す。

■日本のお祭りを次世代に継承

「日本のお祭りはこの10年で26%減少した」。こう訴えるのは片桐萌絵さんだ。日本にはお祭りが約30万件あり、市場規模は1.4兆円に達する。一方で観光化に成功しているのはごく一部で、地域に根ざしたお祭りの多くが資金不足で存続の危機に立たされている。

そこで片桐さんが行っているのは、こうした地域のお祭りの持続的な文化継承の形づくりだ。観光客増だけでなく、将来に継承していくための担い手の増加、そしてお祭り当日だけでなく通年で支えるファンコミュニティの構築だ。こうした取り組みにより、ある離島の秋祭りでは30人だった集客数を500人規模にまでした。

片桐さんは「地域のお祭りを巡る担い手である渡り衆を5年後に100万人にしたい」とビジョンを明かした。

■日本茶葉の小規模生産者を持続可能に

海外での抹茶や緑茶のブーム。それでも「中小規模の日本茶生産者は厳しい状況にある」と強調するのは浅木照平さん。生産者からは「英語や輸出方法がわからない、加工設備が使えない」といった声があがる。一方、バイヤーからも「仲介業者の増加で仕入価格が高騰、『最上級』という表記の乱立で品質がわかりにくい」といった課題があがる。

浅木さんはこうした課題を解決するため、生産者とバイヤーを直接つなげるプラットフォーム「WTEA」を運営する。それぞれの生産者の茶葉にある個性が流通の過程でほかの茶葉と交わり個性が失われるが、WTEAではこうした個性を守りながらのトレードを可能としている。浅木さんは「品質向上に集中できる環境を提供している」と自信を見せる。

さらに石臼の導入も進めている。取引額の7割は粉末状の日本茶だが、石臼が足りていないという。石臼を導入することで、年間8400キロの茶葉の供給を実現していく。

■世界の子どもとつながれるオンライン授業を

「世界の世界の果てまで教育を届け続ける」。このミッションを掲げる五十嵐駿太さんは、日本と世界の学校をオンラインでつなぎ、双方の国の社会課題をディスカッションする授業を小学校から大学まで提供している。67カ国の子どもたちとつながり、生徒は関心のあるテーマがあれば、同じ関心を持つ海外の子どもと一緒に共同研究を行うこともできる。

現在は約200校に導入されている。その半分は公立だ。五十嵐さんは「大切にしているのはグローバルに学んだことを、いかにローカルへ働きかけていくかだ」と話す。こうした取り組みが評価され、現在では国連と共同で世界67カ国の子どもたちを1日に集めるオンラインカンファレンスも開催する。

授業を受けた子どもたちからは「実際に会いたい」との希望も多い。五十嵐さんは旅行業免許を取得することで、それを実現している。

■次回AWARDは9月からエントリー開始

審査委委員長の渡邉氏は「来年開催する『みんなの夢AWARD17』には会場にいらっしゃる皆さんの夢をぜひ、この壇上で語ってほしい」と呼びかけた。「みんなの夢AWARD17」のエントリーは2026年9月頃から開始予定。

※みんなの夢AWARD16のダイジェスト版は下記URLよりご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=oEsglXepopQ


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